「今日も留守居かい?」

酒場の親父の野太い声が聞こえる。俺は黙って首を縦に振り、相変わらずまずい酒に口をつけた。

俺はしがない冒険者の一人だ。職業は司教、性格は善。

冒険には一度も出たことがないが、こんな俺でもエリートのうちに入るらしい。



「他の連中はどのくらい強くなった?」

他の連中、とは私の仲間のことだ。

戦士、侍、僧侶、盗賊、そして魔術師が二人。六人とも、俺のかけがえのない仲間だ。

奴らはついこの間、地下4階でブルーリボンを手に入れてから、もっぱら九階の探索をしている。

皆それなりに強くなった。そろそろ10階へ脚を踏み入れてもいい頃合だろう。

感慨深げに俺が話すと、親父が酒を片手に俺の傍らに座った。



「あんたはいいのかい、それで」

親父が俺を真顔で見つめる。俺はその視線に耐えられず、酒を一気にあおった。

腹の中が焼けつくように熱くなる。



「連中、あんたの能力だけが目当てで仲間に入れただけだろ」

俺は黙った。

司教である俺は、僧侶と魔術師の魔法が扱え、更に道具の鑑定ができる。

この鑑定が出来るのは、仲間内では俺一人だ。

その反面、僧侶と魔術師の魔法を同時に憶えて行くため、成長が他の職業に比べて著しく鈍い。

ゆえに、僧侶や魔術師ほどには活躍の場が少ない。結果どうなるか、それは火を見るより明らかだろう。



「あんた、いいように使われてるだけなんだよ」

わかっている。こんなことをするために冒険者になったわけではないのは。



「悪いことは言わねえ、田舎へ帰りな。ここにはあんたの求めるものは何もねえぜ」

諭すように言い残すと、親父は他の客の酒を出すために席を立った。

求めるものは何もない、か。確かにな。

毎日毎日道具の鑑定の日々。呪われたことは数知れず。無料解呪屋と冷やかされたこともある。

連中は俺の能力が欲しいだけかもしれない。だがそれはそれでいい。

俺は必要とされている。こんな経験すらろくにない司教の能力が、ワードナを倒さんとする連中に。

親父の言う通り、いずれ俺はお払い箱になるのかもしれない。

それでもいいじゃないか。俺は何も求めはしない。

今、ここには俺の居場所があるのだから。



今日も俺は連中の帰りを待つ。俺が俺の仕事をするために。

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