パキー……ン

 澄んだ音と共に一筋の光が飛んで行く。

 ムタがピアを見る。バカもピアを振りかえる…

 ピアの顔は、『呆然』を絵に描いたよう表情だった……そしてその一瞬の後、

「しょええええ―――っ!!!」

 叫び、走り、踊るピア!

「むっむっむっむっ村正が折れたああああぁぁぁぁぁ――――っ!!!!」

 ピアは完全にパニックに陥っていた。この様子を見ていたムタは後に、

『音で表現するならば、そう…ずどどどどどしゅたっ!しょええええええ――!くるっビシイ!……と言った感じであった』

 と、自らの著書『隣り合わせのハイと青春』(パクリじゃん)において記述している。



 ……それはともかく、ピアを落ち着かせなければならない。ムタとバカは思った。

 なにしろ、実は今は戦闘中なのだ

 相手のモンスターが妙に静かなのは、MONTINOをかけられたグレーターデーモンだったからに過ぎない。

 もっとも、呪文が続く限りMASOPICを唱えつづけたおかげで、三人の防御力はかなりのものになっている……、ちょっとやそっと集中力を欠いても、そうそう敵の攻撃はあたらない。

「そうはいっても、もしもの事があるしな」と言ってバカに目で合図を送るムタ。

 バカは心得た!とばかりにピアにツッコミをかます。

「えーかげんにしなはれー!」

 すぽ―――――ん

 鍛えぬかれた忍者の手刀はあらゆる物の首を飛ばす……

 すさまじい高レベル忍者であるバカは、手に触れたものの首を思わず飛ばしてしまうのだ!

 その光景を見ていたムタは、なんとなく『ナイフみたいにとがっては、触るものみな、傷つけた―♪』と言う歌を思い出していた……



 しばらくして。

 KADORTOによって生き返ったピアは、とりあえず落ち着きを取り戻しているように見えた。

「あぁ〜〜〜〜村正ぁ〜〜〜〜やっと見つけた一振りだったのに〜〜〜〜」泣いてはいたが。

 ムタがフォローをいれる。

「まあ、あれだよ。たしか普通の刀で村正を折った侍の伝説が…」

「それは『リルガミン冒険奇憚』でござる。パクんなでござる」

 バカがツッコミをいれる。(すぽ―――――ん)



 …しばらくして。 生き返ったムタが(首を気にしながら)話し出す。

「村正もきっと嫌気がさしたんじゃないかなあ?だってピアって、そんな貴重な刀を包丁変わりに使ってんだもの」

「何を言うか。あれはカボチャの煮付けを作るときに重宝したんだぞ」

「いや、そーゆー問題じゃなくて」

「生のカボチャを切るのって、結構重労働なんだぞ!お前、そう言うことをわかってて言ってるのかっ!?」

「だから、村正を使う事自体に問題が…」

「じゃあお前は、カボチャを丸ごと煮るのか!はっ、そりゃ大層美味い煮付けが出来るだろーよ!」

「(カチン!)俺はカボチャなんて嫌いだもの!あんなもの食う奴の気が知れないね!煮物はやっぱり大根だよ!」

大根の煮物は美味い!それは認める!しかしカボチャを認めないとはなんと狭量な奴!ロードが聞いてあきれるぜ!」

「なんだと!お前だって、ちょんまげは結ってないは茶髪だわ『食った後だけ高楊枝』だわで、それでも侍か!」

「いーかげんにしなはれ」(すぽん)(すぽ―ん)



「……まあ、ムタよ。お前は、村正が折れたのは刀がやる気を失ったせいだと言いたいんだな?」

 まだ首がつながりきってないのか、しきりに気にするピア。

「う〜ん…まあ、そーゆー事なのかな……」同じくムタ。

「よし!じゃあバカ!お前、今日からトクガワと名乗れ!」

「ええっ!?」

「村正が鍛えられた故郷、ヒイズルトコロという国の伝説には『村正はトクガワにたたる』というものがあるそうだ。つまり、目の前にトクガワがいれば村正もやる気を取り戻すに違いない!」

「おおっ!さすがピア!あいかわらず発想の飛ぶ方向が予想できない!」

 得意げなピアと、それを無責任にあおるムタ。

 しかしバカはおずおずと、「あの〜、ちょっといいでござるか?」と不安げな声で問い掛ける。

「おう、なんだ、トクガワ?」ピアとムタの頭の中では、既にバカは訓練場で名前を変更した事になっている。

「それで、やる気を取り戻した村正にたたられた拙者は、どうなるのでござる?」



 ……しばしの沈黙の後。

「死ぬな」「死ぬね」



 ……さらに沈黙。

「……いやでござるぅ――――!!」

「大丈夫大丈夫、すぐに生き返らせてやるから」

「生き返っても、目の前に村正持ったピアがいるでござるぅー―――!!」

「うーん、5・6回も斬れば村正も気がすむんじゃない?根拠はないけど」

「気が済んじゃったら、また折れるんじゃないのか?」

「あ、そうか。じゃあ、バカ…いや、トクガワにはしばらく死に続けてもらう、と言う事で…」

「いやっ、いやでござるううう!!」

「しょうがないなあ…そうだ!」

 ちなみに、このやり取りの間ずっと、グレーターデーモンは彼らを必死に攻撃していた。

 一回もあたらなかったが。



 ……さらに時間が経過して、場所はワードナの玄室。

 ピアはにこやかにヴァンパイアロードの肩をたたき、「今日からよろしくな、トクガワ!」

「……は?」

「お前だったら会う度に殺してるし、何度でも勝手に蘇るからうってつけなんだよ」

「……なにが?」

「それにヴァンパイアロードって、種族名(?)だろ?個人名を俺達がつけてやろうってんだ、感謝しろよ!」
「……いったい、なんのズバア」

「おおっさすが!村正がいきなり復活したぞ!」

「めでたしめでたしだねえ」

「ほんじゃ、帰るでござる!」

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