「やあ、おはようでござる!」

 アドベンチャラーズ・インのいつもの朝。一人だけ、妙にハイテンションな男。

 ニンジャの『バカ』である。

「…ん〜…」「…ふあ〜…」

 その声に起こされたのか、他の二人がごそごそと起き出す。

「…う〜…二日酔いだ…」

 サムライの『ピア』が不機嫌そうな顔でつぶやく。

 無理もない。なにしろこの三人は明け方まで宴会をしていたのだ。

 ただし、ギルガメッシュの店は早々に追い出された(5人ほど死んだ)ので、宿…アドベンチャラーズ・インの馬小屋で馬刺しをつまみに騒いでいたのだが。

 ピアの横には馬をさばいたままの村正、そして大量の灰。

「…?なんだっけ、これ?」

「ああ、それは…」答えるのはロードの『ムタ』。

「バンパイア・ロードだよ。昨日、無理やり連れてきたじゃないか。覚えてないの?」

「……あ、そうか!馬さばく時の血をどうしようかってんで、奴に飲ますつもりで…」

「実際に全部飲ませたんだけどね。辛そうな顔してたなあ」さわやかに笑うムタ。

「で、朝になったら灰になったと」「そうそう」

 疑問がすみやかに解決され、さわやかな笑いがあたりを包む。

 笑っていないのは先ほどから『おはようでござる』のポーズのまま立っているバカだけである。

「少しは、かまって欲しいでござる…」どうやら今度は『寂しいでござる』のポーズらしい。

「解った解った。おはよう」「はいはい。おはよう」

「「…で?」」ピアとムタの声がハモる。「「なんで『ござる』なんだ?」」

「ふっふっふ。気付いてくれたでござるか。拙者、ついに気がついたのでござるよ」

「「なにを?」」

「拙者は超エリートのニンジャでござるよ?なのにどうもこのパーティーでは、ほんの少し存在を軽んじられているような気が常々していたのでござるよ!」

 『ほんの少し』のあたりで妙にやさしい表情になるピアとムタ。

 そんな、実は目が笑っていない二人の表情には気がつかずにバカは話を続ける。

「それは、拙者があまりニンジャらしくないからじゃないか?と!で、ござる!」

「……それで、言葉遣いからニンジャっぽく、と?」

「そうでござる!」

 バカの姿をしげしげと眺める二人。黒い覆面に首から下は全裸というその姿は、誰がどう見てもニンジャなのだが。

「御二方にもこれで拙者がニンジャだということを再認識していただけたはず!もっと拙者を頼りにしてくれてもよござんすよ?」

 すでに言葉遣いに破綻が見られる。

「そして、更なる修行を重ね、ゆくゆくはニンジュチュを身に付けるでござる!」

 舌も回っていない。

 すでに、ピアはあきれて2度寝に入っているし、ムタは朝からいやなものをしげしげ見てしまったショックで吐いてしまっている。

「さうすれば、拙者は…」

 まだまだ続くバカの演説。ピアのいびき。バンパイアロードの灰を使ってゲロを掃除しているムタ。

 うららかな小春日和の、平和な日常であった…。

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