「さあ、今日の私はどうかな?」

妙なセリフとともに、これまた妙な機械に掌をあてる男。

…しばらく経つと、機械が反応を返してくる。

男はその反応に満足したらしく、「にやり」と笑うと、いそいそと黒装束を着込み始めた。

「さて、今日も営業に行って来ますか」カント寺院の最高責任者、キラである。

彼の言う『営業』とは、早い話、迷宮で冒険者をたこ殴りにすると言う身も蓋もない代物である。

まあ、それによって寺院への寄付金が多少なりとも上がっているのは事実ではあるのだが。

キラは張りきりつつもコソコソ歩くという、器用なそぶりで迷宮へと入っていった。

その姿を物影から見ていた男達がいた。

もちろん主役である所の3人である。

「じゃあ、行きますか」

キラの後をつけるようにして迷宮へと入って行く3人。

途中でバカがなにやらピアとムタに話しかけている…あ、TILTOWAITをくらった。

どうやら、またいらんボケをかましていたようだが、別にいつものことであるらしく、

2人は黒焦げのバカを引きずって階段を降りていった…。

ワードナの迷宮、地下9階。
 エレベーターを降りてすぐ左手にあるドアの向こうで、キラは待機していた。

「さて、今日はどんな冒険者が…」

ずぎゃあああああああああ!(例の音)

「ば、ばかな!ドアを開けるのにTILTOWAITだって?」キラが驚愕の叫び声をあげる。

「待ち伏せはわかっていたんでね…ちょっと、意表を突いてみたのよ」

「あ、あなたたちは!?」

「そう!俺達は!」

「不健康戦隊フォアグラーZ!」

(どどーん!)

見事に3人の声がハモる。どうやら相当の練習を積んできたらしい。(第3話参照)

「ししし、知りませんねえ。あなたたたたちなどど」

「ごまかしたって無駄だぜ、キラさんよ」

「だ、誰ですかそれは。私がそのキラさんとやらであると言う証拠でも?」

「おいムタ、証拠を見せてやれ」

「OK!」

ムタが短い呪文を唱える…キラは気付いた。「この呪文はKANDI!」

「キラは……」ムタがつぶやく…そして妙に長い「間」の後、「ここにいる!」と叫ぶ!

と、同時に「わかっとるがなー!」とバカのツッコミ。

まさに絶妙のタイミング。これも修練の賜物である。

予定と違っていたのは、ムタの首がスっポーンと飛んでったぐらいの物である。

「まあ、それはそれとして」

こんなことも日常茶飯事らしく、落ち着き払ったピアが言う。

バカにいたっては、ムタの首でリフティングの練習なぞやってるぐらいだ。

「なあキラさん。迷宮内のことは俺たち冒険者に任せといてくれないか?」

「ふ。そうはいきません。私がこの『営業』をやめてしまったら、客が減ってしまうじゃないですか」

「これ以上儲けたってしょうがないだろう?」

「いいえ、最近の売上は、女の子に巫女服を着せておくための重要な『説得力』なのです!」

(どどーん!)

「ここで売上が落ちたら、私が強引に通したあの格好も、却下されてしまうじゃないですか!」

「……………」 さすがにピアもバカも唖然としている。

「…どうしても、やめてくれない、と?」

「ええ、ついでに言っておきますが今日の私は、あなた達を迎え撃てる自信があります!!」

「今日の私?」

「ふっ…今日の私の精神状態は万全!Dr.キャッポーが今朝、そう教えてくれました!」

「ド…Dr.キャッポー…」

ピアの脳裏に雑誌の通販広告と、『日ペンの美子ちゃん』が浮かぶ……

「…わかった。とりあえず話し合おうじゃないか…」

足元をふらつかせながらバカが言う。恐るべし、Dr.キャッポー!

「…率直に言うと、俺達の仕事を取ってほしくないわけよ」

「あなた達の仕事?ただの冒険者でしょう?そうそう、常々疑問に思っていたのですが、大体、『不健康戦隊』ってのはなんなんです?ただのパーティーのくせしてヒーローぶって…」

「あまいよ、キラ。我々はちゃんと、ダンジョン、引いてはこの街のために戦っているんだぜ」

「そんなもん、他のパーティーだってやってるじゃないですか。ワードナを倒すために迷宮に潜って…」

「何を言ってるんだ。ワードナがいなくなっちまったら、この町は絶対廃れるぜ?迷宮に入る冒険者達で潤っているような物だからな、ここは」

「え?あなた達はワードナを倒すために迷宮に潜っているのではないのですか?」

「ワードナ?もう何千回倒したかわかんないよ」

「ええっ!?ワードナが倒されたなんて話、聞いたことないですけど?」

「だって俺達、報告してないもん。アミュレットを狂王の奴に渡しちまうと、もうワードナは出なくなっちまうらしくてな。最近はもっぱら、ワードナを倒しそうな強いパーティーを地下10階で待ち伏せて…ってのが俺達の仕事なわけ」

「王は?王はこのことを?」

「知ってるわけないじゃん。俺達のスポンサーはあくまで街!訓練場とか酒場とか…」

「し、しかし、悪の魔道士がいつまでものさばっているなどと言うことが…」

「ワードナがいなくなったら、トレボーのことだ、すぐ戦争になるぜ?足元の憂いがなくなるんだからな。王の狂いっぷりは聞いたことがあるだろう?」

「うっ…」

「で、いざ戦争になったとしてもだ。勝てるとは限らんだろう?王の持っている戦力なんて、この迷宮すらろくに突破できないような連中だ。ましてや、ワードナがいなくなってどれだけの冒険者がここに残ると思う?冒険者ってのは、傭兵とは違うからな。戦争に使われるために居残るって奴は…あまりいないと思うぜ?」

「し、しかし…」

「いままで、寺院とは一応無関係だったんだけどな。まあ気付いてはいたみたいだけど…黙認って奴さ。で、大僧正のあんたにこうゆう事されると、スポンサーの手前ねえ…」

「で、でも巫女服ぅ…」

「……それは俺も惜しい。まあ、冒険者の間で評判がいいって、宣伝しといてやるよ。な?」

「…わかりました。とりあえずあなた達は、私の味方なのですね?」

「味方って言うか…なんて言うか…」

「では、私も不健康戦隊にいれてください!」

「はいい?!」

「ちょうど最近、私も肝臓が悪いんですよ。ぴったりでしょ」

「それなら良し!」

新たなる仲間の誕生であった!(どぢゃ――ん!!)

「ところで、さっきから私と話しているあなたは、ピアさんですかバカさんですか?」

「知らん」


  next menu