プソ小説
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「なんてゆーかー、アレだけ緑が広がってるんだからー、甘ーい果物の一つでも成っててもいいと思わない?思うでしょ?思わなきゃ人間じゃないよ!それでもう森中クタクタになって探したのに酸っぱかったり苦かったり渋かったりしょっぱかったりどっくんどっくん脈うってたりするよーな実しか成ってなくってもうサイテーだったの!あ、でも脈うってたのはちょっと美味しかったかな。脂が乗ってて。でもダイエットには良くない気がしたから、依頼人のためにも無視したんだー。あー、わたしってホントによくできたハンターよね、そー思うでしょ?その顔は思ってるって顔だ!わーいやったー!」

Piaはもはや彼女に関して考えるのを止めていた。今はApricotをしげしげ見ながら、(アンドロイドでも苦笑いってのができるんだなー…)などと言う考えがぼーっと頭に浮かんでいただけだ。

…『彼女』というのは、パン屋三姉妹の探索中、途中で合流したMaoというフォニュエールだ。

甘いものをラグオルから持ち帰る、などというすっ飛んだ依頼を受けて探索をしていたと言うが、森で見付からなかったからと言って、洞窟で探すのは無茶苦茶無理があるんじゃないか、などと突っ込んだ3人は、

「えーだって違う星なんだから、そんな固定観念にとらわれちゃいけないよー。頭古いよそれー。それにひょっとしたら、地下に甘いものがあったからこそ、パイオニア1の人たちもみんな一斉に地下に潜っていったのかもしれないし、そうだとしたらわたしたち超お手柄ですっごいことにねえねえ!」

などと言う反撃にあって以来、口をつぐんでいた。

さて。Maoがひたすらしゃべり続けている間、Sainは前回のPia以上の後悔を感じていた。 心細いから一緒に行動したい、というMaoの言葉に、正義感に燃える彼は一秒で了承したが、その結果、パーティーに大出力アンプと巨大スピーカーが標準装備となってしまい、モンスターが次から次へと狙ってくるようになってしまったのだ。

もっとも、彼も仲間たちも歴戦のハンターであるから、この程度の猛攻はなんとかしのげてはいたのだが…なによりSainを恐れさせていたのは、Apricotの(文字通り)冷たい目であった。 なにしろ目が訴えているのだ。「こんなうるせえのを仲間にしやがって」と。そして目と同時にSainに向けられている銃口も。

…ApricotはSainに照準を定めつつも、Maoを観察していた。アンドロイドである彼女は、人間が『甘いもの』という食べ物に対して持っている欲求の凄まじさを、今はじめて目の当たりにしているのだ。

PiaとSainは気が付いていなかったが、彼女の機械の眼は全てを捕らえていた。新たな種類のモンスターが現われるたびに、さりげなくそれに噛み付いているMaoを

そう、彼女は、とりあえず全てのモノを味見しているのだ

「………」

Apricotは、なんとなく深く考えると頭痛がするような気がしたので、とりあえずSainに照準を合わせ続ける事にした。戦う事だけ考えていれば問題は起きない。そう考えたのだ。

…しばらく後、ナノドラゴンに噛み付いたまま飛んで行ってしまったMaoを見たとき、「なにやってんねん!」と叫びながら、思わずSainに向かったままの銃の引き金を引いてしまった事は、彼女にとってちょっとした誤算であった。

 
 
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